大会開幕前、メディアや専門家の間ではタデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーによる激しい一騎打ちが予想されていました。しかし蓋を開けてみれば、ポガチャルが山岳ステージと個人タイムトライアルで圧倒的な出力を見せつけ、最終的に6分超の大差をつけてマイヨ・ジョーヌ(個人総合時間賞)を奪還する結果となりました。
この決定的なタイム差を生んだ最大の要因は、両者の「コンディションの仕上がり」と「チーム力」にあります。ヴィンゲゴーは同年4月のイツリア・バスクカントリーで鎖骨骨折と肺気胸を伴う深刻な落車事故に遭い、十分な実戦調整を積めないままスタートラインに立ちました。対するポガチャルは、5月のジロ・デ・イタリアを圧倒的な力配分で制し、最高のフィジカルと研ぎ澄まされた集中力を保ったままツールへ乗り込んできたのです。
さらに見逃せないのが、ポガチャルを擁するUAEチーム・エミレーツの鉄壁の布陣です。アダム・イェーツ、ジョアン・アルメイダといったグランツールで表彰台を狙えるクラスのアシスト陣が山岳で超高速トレインを形成。ヴィズマ・リースアバイクの消耗を誘い、ヴィンゲゴーが孤立した勝負どころでポガチャルが破壊的なアタックを繰り出す戦術が完全に機能しました。第15ステージのプラ・ダデや第19ステージのイゾラ2000で見せた登坂スピードは、従来のコースレコードを大幅に塗り替える驚愕のパフォーマンスでした。