救いの手が届かなかった行政側の対応についても、厳しい検証がなされた。事件発覚前、近隣住民から「子供の泣き声が異常な頻度で続いている」との通報が、大阪市こども相談センターへ複数回寄せられていた。しかし、担当者が現地へ赴いたものの、インターホンに応答がないことから手紙の投函や玄関越しでの声かけにとどまり、扉をこじ開けて強制介入するまでには至らなかった。
防げなかった背景には、当時の現場が抱えていた深刻なキャパシティ超過と法的権限の壁があった。児童相談所が取り扱う相談案件数が急増する中、明確な確証がない段階での立ち入り調査に対する心理的・手続き的ハードルは極めて高かったのである。制度の隙間と対応の遅れが重なった結果、命を救う最後の砦は機能しなかった。