二人の関係が修復不可能なレベルまでこじれた最大の要因は、清太の母親の着物を売って米に変えたエピソードだ。おばさんは「みんなのために」と米を確保したが、清太にとっては大切な母親の形見を奪われたという深い傷となった。ここにお互いの価値観の決定的なズレが存在する。
生き延びることだけが最優先だったおばさんにとって、思い出の品は今日を生きるための食料でしかなかった。対して、突然両親を失い心の拠り所を求めていた清太にとって、それは尊厳そのものだった。おばさんが発した鋭い言葉の数々は、彼女自身が抱いていた「明日の米がない」という恐怖の裏返しでもあったのだ。