肺が痛い息を吸うと感じる現象は、医学的には「胸膜性胸痛(Pleuritic chest pain)」と呼ばれます。肺が空気で膨らむ際、炎症を起こした胸膜同士が激しく摩擦することで、ナイフで刺されたような鋭利な激痛が生じます。
1. 胸膜炎と肺炎初期症状の連動性
細菌やウイルス、結核菌、膠原病などが原因で肺を包む膜に炎症が及ぶ胸膜炎は、吸気時痛の代表格です。肺炎初期症状として現れる咳、38度以上の発熱、黄色や緑色の粘稠な痰が先行し、病変が肺の表面まで拡大した段階で激しい胸痛へと転換します。咳をすると肺が痛い理由も、咳の発作によって胸郭が急激に縮小・拡張し、炎症部位が強く牽引・圧迫されるためです。
2. 若年痩せ型男性に好発する自然気胸原因と病態
突然の胸痛と息切れで発症する代表疾患が自然気胸です。自然気胸原因の大多数は、肺の頂上部(肺尖部)に形成された「ブラ(肺嚢胞)」と呼ばれる薄い空気の袋が破裂することにあります。漏れ出た空気によって胸腔内の圧力が上昇し、肺が風船のように縮んでしまうことで激痛と換気障害を引き起こします。10代〜30代の背が高く痩せ型の男性に好発し、喫煙や急激な気圧変化、過労が破裂の誘因となります。
3. 致死率の高い肺塞栓症エコノミークラス症候群の脅威
下肢の深部静脈にできた血栓が血流に乗って肺動脈を閉塞させる肺塞栓症エコノミークラス症候群は、見逃してはならない致死的病態です。長時間のデスクワーク、フライト、災害時の車中泊、脱水状態などが引き金となります。突然の鋭い胸痛、息切れ、頻脈、喀血、失神が特徴であり、発症から数十分で心停止に至るケースもあるため、一刻を争う救急搬送が必要です。