血液検査で異常が見つかった際、最も重要なのは「なぜ肝臓が攻撃されているのか」という根本原因の特定です。猫の肝臓数値ALTが高い原因は、単一の疾患だけでなく、多臓器が複雑に絡み合うケースが目立ちます。
まず代表的な原発性疾患として挙げられるのが、胆管肝炎(胆管炎)と肝リピドーシス(脂肪肝)です。特に猫の解剖学的構造として、胆管と膵管が十二指腸に入る手前で合流しているため、腸内細菌の上行性感染や慢性炎症が「膵臓」「胆管・肝臓」「腸」の3箇所に同時に波及しやすく、これは臨床現場で「三重点炎(トライアディティス)」と呼ばれています。
一方で、老猫の肝臓数値急上昇の理由を探ると、肝臓そのもの以外の疾患が引き金になっている事態が浮き彫りになります。代表格がシニア猫に好発する甲状腺機能亢進症です。甲状腺ホルモンの過剰分泌により全身の代謝が異常に亢進すると、二次的に肝細胞がダメージを受け、ALTやALPが激しく上昇します。また、腹腔内リンパ腫などの悪性腫瘍が肝臓へ浸潤しているケースも老齢期には強く疑われます。
家庭内での偶発的な中毒も見落とせません。ユリ科植物の花粉や葉、人間用の解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)、エッセンシャルオイル(精油)などの化学物質は、猫特有のグルクロン酸抱合能の欠如ゆえに肝臓で分解できず、急性肝壊死を引き起こします。