ミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム:IUS)は、子宮内に留置したプラスチック製のアームから黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を最長5年間にわたり微量ずつ放出し続ける医療機器です。子宮内膜の増殖を抑えて受精卵の着床を防ぐとともに、子宮頸管の粘液を変化させて精子の侵入を強力に阻害します。
WHO(世界保健機関)や日本産科婦人科学会のデータによると、ミレーナの装着後1年間の避妊失敗率(パール指数)は約0.2%と報告されています。これは経口避妊薬(低用量ピル)の一般的な失敗率(約7%)やコンドーム(約13%)と比較しても圧倒的に低い数値です。しかし、医学の世界に「100%絶対」は存在しません。臨床現場で確認されている避妊失敗の主な原因は、次の3点に集約されます。
ミレーナによる避妊失敗が起こる第1の要因は、器具の位置ズレ(転位・下降)です。子宮底の正しい位置に収まっていれば均一に作用する黄体ホルモンも、器具が子宮頸部付近まで下がったり斜めに傾いたりすると、子宮内膜全体を十分に薄く保てなくなります。その結果、受精卵が着床可能な環境が局所的に生じてしまうのです。
第2の要因は、無自覚の自然脱落です。特に装着後数か月以内や、月経血の量が多い時期に、本人が気づかないうちに経血とともに体外へ排出されてしまうケースがあります。器具が子宮内から消失していれば、当然ながら避妊効果はゼロに戻ります。
第3の要因は、装着初期のタイミング重複や有効期限超過です。月経開始から数日以上経過して排卵直前に装着した場合、すでに受精が成立していたり、ホルモン効果が子宮内膜に行き渡る前に排卵・受精・着床が進んでしまったりすることがあります。また、最長使用期限である5年を超えて放置した場合も、ホルモン放出量が徐々に低下して妊娠リスクが高まります。