「塩を振ってすぐに焼く」あるいは「パックから出してそのままグリルに入れる」という調理手順をとっているなら、それが失敗の最大の要因です。魚の表面には、酸化した脂質やトリメチルアミンなどの臭み成分を含んだドリップ(肉汁)が浮き出ています。これを放置したまま加熱すると、臭み成分が熱によって身の奥深くまで浸透し、不快な風味として定着してしまいます。
ぶりの旨味を逃さず、ふっくら柔らかく仕上げるための絶対条件が「振り塩と酒を使った下処理」です。切り身の両面に魚の重量に対して約1%〜1.5%の塩を均一に振り、室温で約10分〜15分置きます。この浸透圧の作用によって、身の内部にある余分な水分と臭みの原因物質が表面へ押し出されます。
ここで極めて重要なのが、表面に浮き出た水分の処理です。キッチンペーパーで水分を徹底的に拭き取った後、酒(清酒)を軽く表面に振る、または酒を含ませたペーパーで優しく拭うことで、アルコールの共沸効果が働き、残存するわずかな魚臭さを空気中へ蒸発させます。さらに、塩分によってタンパク質が適度に凝固し、加熱時の急激な肉汁流出を防ぐ「保水壁」が形成されるため、パサパサ防止に直結するのです。