臨床の現場で最も警戒されるのが、脳梗塞の前兆として現れる生あくびです。脳の血管が血栓で閉塞、あるいは狭窄すると、組織への血流が途絶えかけます。特に、呼吸や自律神経の中枢が集積する「脳幹(延髄・橋)」や、平衡感覚を司る小脳周辺の血管(椎骨動脈や脳底動脈)に循環障害が生じると、初期症状として頻繁な生あくびが誘発されます。
一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる病態では、本格的な脳梗塞に陥る直前に数分から数十分だけ血流が途絶え、激しい生あくびとともに片側の手足の脱力や呂律(ろれつ)の回りにくさが生じます。「少し休んだら治まった」と放置すると、48時間以内に不可逆的な大規模梗塞へ移行するリスクが極めて高くなります。
さらに、脳血管障害以外にも以下のような重篤な疾患が生あくびのトリガーとなります。
第一に、頭痛や吐き気を伴うケースです。激しい頭痛の前に生あくびが連続する場合、脳圧の上昇(頭蓋内圧亢進症)や、くも膜下出血の切迫破裂、脳腫瘍による周囲組織の圧迫が疑われます。第二に、急激なめまいやふらつきを併発しているケースでは、小脳出血や脳底動脈循環不全症の疑いが濃厚です。立っていられないほどの浮遊感や回転性めまい、視界の二重化(複視)が同時に現れた場合、救急車を要請する判断基準に直結します。