昭和を代表する大スター・梅宮辰夫さんが娘の交際相手に向けた言葉は、芸能史に残る苛烈なものでした。ワイドショーのリポーター陣を前に辰夫さんが言い放った「あいつは希代のワルだ」という直言は、単なる娘を奪われた父親の嫉妬などではありませんでした。辰夫さんの反対理由の根底にあったのは、裏社会や夜の街の表裏を知り尽くしたベテラン俳優ならではの、研ぎ澄まされた危機察知能力でした。
辰夫さんは羽賀が背負っていた巨額の借金の実態や、周囲に群がる不透明な人脈を独自に調査し、娘が「金銭調達の道具」として利用されていることを見抜いていました。これに対し、羽賀は記者会見の場で「辰夫さんに認めてもらえるよう誠意を見せたい」と弁明を繰り返しました。しかし、中身の伴わない言動とパフォーマンス先行の姿勢は世間の冷笑を買い、当時のメディアから「誠意大将軍」という強烈なアイロニーを込めた仇名で呼ばれることになります。
当時、一部の世論は「旧態依然とした頑固親父が若者の純愛を引き裂こうとしている」と辰夫さんを批判的に見る向きもありました。しかし後年、この父親の透徹した人間観察眼は、恐ろしいほどの精度で証明されることになります。