肯定文における主観・客観の差異以上に、学習者が実務で冷や汗をかくポイントが否定文の挙動です。肯定形ではどちらも「義務」という大きな枠組みを共有していますが、否定形になるとdon't have to must not 違いは完全に別の次元へと分岐します。
「must not」は、100%の禁止を突きつける強烈な表現です。規則違反や重大な危機を警告する際に用いられ、「絶対に〜してはならない」という不許可を意味します。海外の空港や公的機関の掲示で見かける「Passengers must not leave their bags unattended.(荷物を放置することは固く禁じられている)」がその典型例です。
一方、「don't have to」は義務の消滅を指し、「〜する必要はない(〜しなくても構わない)」という選択の自由を相手に残すニュアンスになります。例えば、オフィスのドレスコードが緩和された現場で「You don't have to wear a tie today.」と言えば「今日はネクタイを着用しなくてもいいですよ」という親切な案内になりますが、ここで誤って「You must not wear a tie today.」と伝えてしまうと、「ネクタイの着用は厳禁だ、外せ」という奇妙な命令に変貌してしまいます。