実際のビジネス現場や留学環境では、どのような摩擦が生じているのか。都内の外資系コンサルティングファームで働くアソシエイト(30代男性)は、入社当初の苦い失敗を次のように振り返る。
「プロジェクトの初週、アメリカ人のシニアマネージャーから『資料の送付が遅れて本当に申し訳ない』と謝罪のTeamsメッセージが届きました。私は『全然気にしていませんよ』と伝えたくて、短い方がスマートだろうと『Never mind!』とだけ返信したのです。するとその後、マネージャーの態度が明らかに硬化し、後日1on1で『私の謝罪はそんなにあなたを苛立たせたのか?』と問いただされました。あのときの背筋が凍るような感覚は今でも忘れられません」
一方、都内の語学学校で教鞭を執るオーストラリア出身の講師は、ネイティブ特有の感覚についてこう証言する。
「日本人学習者はとても礼儀正しいのに、謝られたときの返答だけが非常にぶっきらぼうに聞こえる場面によく遭遇します。カフェでぶつかって『Oops, sorry!』と謝ったネイティブに対し、日本人が真顔で『Never mind』と返してしまう。言われた側は『えっ、怒ってる?』と戸惑います。そこは笑顔で『No worries!』や『You're fine!』と返すだけで、一瞬で温かい空気が作れるのです」
SNSやコミュニティ掲示板(Redditや知恵袋など)を精査しても、「ネイティブの上司にNever mindと送って怒られた」「冷たいと指摘された」という相談は後を絶たない。文法的な正しさ以上に、言葉が醸し出す「トーン(声の調子や温度感)」に無頓着であることが、見えない障壁を生み出している。