札幌市西区八軒に位置する農試公園は、旧農林省北海道農業試験場跡地に1975年(昭和50年)に開設された歴史ある総合公園です。開設から40年以上が経過して施設の老朽化が進んだことから、札幌市は2020年度から段階的な再整備事業に着手しました。かつて公園のシンボルとして親しまれた巨大な「ガリバー遊具」の老朽化に伴う解体・再編を含め、足かけ数年に及んだ工事の経緯詳細を振り返ると、単なる遊具の更新にとどまらない「都市公園の現代的刷新」が意図されていたことが分かります。
札幌市みどりの推進部が公表した基本設計方針に基づき、2023年春に先行オープンした新遊具エリアは、2026年現在も道内外の公園行政から視覚的モデルケースとして高い注目を集めています。その核となるのが「インクルーシブ(包括的)デザイン」の全面採用です。車椅子のままアクセス可能なスロープ付き大型複合遊具や、体を包み込んで揺れを楽しめる安全設計のブランコ、視覚や触覚を刺激する仕掛けなど、障がいの有無や年齢にかかわらず誰もが同一空間で遊べる工夫が随所に凝らされています。
リニューアル後の遊具に対する保護者らの評判を現地で取材すると、「以前の木製遊具に比べて視界が広く確保され、死角が激減したため見守りの心理的ストレスが大幅に減った」「クジラをモチーフにしたスライダーやクライミングウォールなど、幼児から高学年まで運動量に応じて自然と遊び分けができる」といった極めて高い評価が聞かれます。老朽化したレガシーを解体し、安全規格を徹底的に引き上げた設計思想が、現代の子育て世代のニーズと完全に合致したと言えます。