物語の舞台は、約50年前からごく稀に男性が妊娠する体質へと変化する事例が確認され始めたパラレルな日本社会。それでも依然として「男性の妊娠」は極めて稀有な現象であり、社会的な認知や法整備、医療体制は大きく立ち遅れていました。
主人公・檜山健太郎(斎藤工)は、大手広告代理店で順風満帆なキャリアを歩むエリートプランナー。人生を完全にコントロール下に置き、要領よく世渡りをしてきた彼でしたが、ある日突然、原因不明の激しい嘔吐や倦怠感に襲われます。病院で下された診断は、まさかの「妊娠約10週目」でした。
お腹の子の生物学的な相手となったのは、フリーランスのライター・編集者として自立した道を切り開く瀬戸亜季(上野樹里)。二人は特定の恋人関係や婚姻関係を結んでいたわけではなく、互いに束縛しない大人の割り切った関係を続けていました。
思いがけない事態に直面した健太郎は、当初中絶を真剣に検討します。しかし、男性向け人工妊娠中絶の手続きの壁、社会からの奇異の視線、そして広告代理店社内での出世レースからの脱落の恐怖に抗うため、逆転の発想として「妊夫であることを公表し、自らを広告塔にするビジネス」を立ち上げます。つわりの苦痛、乳腺の発達による胸の張り、社会的マイノリティとしての孤独など、これまで女性側だけが一方的に背負わされてきた身体的・社会的負荷に直面しながら、健太郎の価値観は根底から覆されていきます。