関西の古い慣習をそのまま引けば、「紐銭にお返し(内祝い)は一切不要」というのが民俗学的な原則です。紐銭は赤ちゃん個人に対する「厄除けの施し」や「お小遣い」という性格が極めて強いため、親がお返しをしてしまうと「厄を相手に送り返すことになる」「赤ちゃんの福を減らす」と忌避された歴史があるためです。
しかし、人間関係が多様化し、都市部での生活が中心となった現代において、「昔の風習だから」と何もリアクションを取らないでいると、親族間や知人間で思わぬ摩擦を生むリスクがあります。特に東日本出身の親族からすれば、「お祝いを包んだのにお礼の連絡一つない」と受け取られかねません。
プロの目線から導き出す、角を立てない対応の決定的な境界線は以下の通りです。
まず、3,000円から5,000円程度の一般的な紐銭であれば、品物による内祝いは原則として不要です。その代わり、参拝当日の夕方までに電話やメッセージで心のこもった感謝を伝え、後日(1か月以内を目安に)、お宮参りの際にプロや家族が撮影した赤ちゃんの晴れ姿の写真を添えた「お礼状」を郵送するのが最もスマートな礼儀です。
一方で、1万円を超える高額の紐銭をいただいた場合、あるいは事前に別途「出産祝い」をいただいているにもかかわらず重ねて手厚い紐銭をもらった場合は、半額から3分の1程度の「内祝い(赤ちゃんの写真付き命名札を添えたカタログギフトや上質なタオル、日持ちする焼き菓子など)」をお返しするのが現代の賢明な処世術です。その際、のし紙の表書きは「内祝」、名入れは「赤ちゃんの名前(ふりがな付き)」とします。
「相手が完全な関西ルールを前提にしている親戚」である場合は、品物でお返しをすると「水臭い」「風習を知らない」と逆に恐縮されるケースもあります。迷った際は、実家や義理の実家の両親に「〇〇伯父さんから紐銭をいただいたのだけれど、我が家のしきたりとしてお返しはどうするのが自然ですか?」と事前に相談を持ちかけるのが、親族間の心理的摩擦を未然に防ぐ黄金律です。