「渡辺の漢字はいったい何種類あるのか」という問いに対し、巷では「50種類」「100種類以上」といった極端な言説が飛び交っています。早稲田大学教授で漢字研究の第一人者である笹原宏之氏の調査報告(三省堂ことばのコラム)によると、かつて有名ホテルの結婚式場が準備していた席次表用のフォント外字リストには、「辺」だけで13種類もの字形が並んでいた事実が記録されています。現場のプロですら正確な識別と出力に神経をすり減らしていたわけです。
実態を精査すると、渡辺の漢字何種類あるという疑問の真相は、「文字コードに登録されている公式な文字」と「手書きの筆跡から生じた異体字」の混同にあります。明治5年(1872年)の壬申戸籍編纂当時、役場の書記官が手書きで毛筆登録を行った際、点やつなぎの形が微妙に異なる無数のバリエーションが正式な戸籍文字として登録されてしまいました。これが俗にいう「戸籍のゆらぎ」です。
民間伝承や外字コレクションを網羅した渡邉異体字一覧などを参照すると、しんにょうの点の数(1点・2点・3点)、冠の形状、内部のパーツの組み合わせにより、理論上は50種類以上の図形パターンが確認できます。しかし、現在JIS漢字コードやUnicodeに収録され、一般的な行政システムやデジタル端末で処理可能な渡邉のなべの漢字の種類は、実質的に以下の主要な3パターン(およびそのコード派生)に収束しています。