なぜネット上では定期的に松下政経塾の失敗理由が議論されるのでしょうか。その根本には、創設者である松下幸之助の設立趣旨と、現代の政治環境の間に生じた構造的なズレがあります。
1979年の設立時、松下幸之助は「日本の繁栄を支える精神的支柱の確立と、二十一世紀の理想の日本を実現するリーダーの育成」を掲げました。幸之助が求めたのは、単なる政策通ではなく、泥まみれになって現場を歩き、民衆の痛みに寄り添う「人間味のあるリーダー」でした。毎朝の清掃活動や100キロ行軍、自衛隊体験入隊や工場実習など、五感を総動員する研修プログラムはその名残です。
しかし、平成期以降の政治改革の中で、塾生たちは「クリーンで理論武装が得意な政策エリート」として重用されるようになります。結果として、泥臭い利害調整や党人派のような人心掌握術に欠け、「机上の空論を振りかざす頭でっかち集団」というレッテルを貼られる場面が増加しました。社会学的に見れば、「官僚機構の硬直化を打破するための第三極エリート養成」という試みが、皮肉にも新たな官僚的優等生を生み出すシステムに同質化したことが、オワコン説の根底にある心理的幻滅を生んでいます。