往年のファンのみならず、現代の新規視聴者からも頻繁に上がる疑問が「一年戦争のシャアはどう見ても20歳に見えない」という点です。落ち着き払ったバリトンの声、ガルマ・ザビを手玉に取るマキャベリズム、そしてワイングラスを傾ける優雅な仕草。ネット上では長年「設定ミスではないか」「実年齢は25歳以上だったのでは」という議論が交わされてきました。
この「シャア20歳説のリアリティ」に決定的な論理付けを行ったのが、安彦良和氏が手掛けた漫画およびアニメ作品『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』です。
作中で描かれた戦慄のプロットは、「私たちが知るシャア・アズナブルは、本物のシャア・アズナブルではない」という事実でした。本物のシャアは、テキサスコロニーのアズナブル家の長男であり、瞳の色を除けばキャスバルと瓜二つの容姿をしていました。キャスバルはジオンの士官学校に入学するため、本物のシャアを謀略によって事故死させ、その身分証と戸籍を乗っ取ったのです。
この入れ替わり劇により、キャスバルは自身の素性を完璧に偽装しました。本物のシャアとキャスバルは同年代(わずかな月齢差のみ)であったため、公式記録上の「シャア・アズナブル」の年齢(U.C.0059年生まれ、一年戦争時20歳)は厳然たる事実として成立します。幼少期から命を狙われ、暗殺の恐怖に怯えながら偽名を使い分けて生き延びてきたキャスバルにとって、20歳という年齢はすでに「人生を何周も潜り抜けてきた百戦錬磨の謀略家」としての風格を帯びるのに十分すぎる過酷な歳月だったのです。