和歌山地裁の法廷において、裁判員と裁判官が極めて慎重な判断を迫られたのは、主に「覚醒剤の入手」「犯行機会の排他性」「殺害の動機」という3つの争点でした。
検察側が提示した状況証拠の柱は、須藤被告のスマートフォンに残された検索ログです。事件前、被告の端末から「覚醒剤 死亡」「完全犯罪」「トリカブト」などのキーワードが検索されていた事実が提出されました。さらに、事件直前に田辺市内で密売人と接触し、覚醒剤らしき粉末を購入していた通信ログや位置情報も法廷に示されました。
これに対し、弁護側および被告人質問における須藤被告の主張は真っ向から対立しました。被告は「野崎氏本人から『覚醒剤を買ってきてほしい』と頼まれて手渡しただけ」と供述。自ら飲ませた事実はなく、野崎氏自身が精力増強などの目的で自ら摂取した可能性、あるいは第三者の関入の余地が排除できないとして、「合理的な疑い」が残ると強く訴えました。
さらに「犯行機会」を巡り、家政婦が外出し、夕食後に野崎氏と須藤被告が2人きりだった約4時間の密室性が問われました。検察側は「第三者が侵入した形跡はなく、被告以外に摂取させる機会はなかった」と主張し、弁護側は「致死量を気づかれずに飲ませる具体的な方法は証明されていない」と反論しました。