心気妄想は本人の意志や精神論で改善する症状ではなく、脳の生物学的な異常に基づいているため、早期の専門的な精神科医療が必須となります。
医療機関へ直ちにつなぐべき受診の目安は以下の通りです。
・複数の診療科で検査を受け「異常なし」と言われても受診をやめないとき
・不治の病への確信から食事や水分を拒絶し、体重が急激に減少しているとき
・睡眠障害が悪化し、昼夜を問わず病気への不安を訴え続けているとき
・「家族に迷惑をかける前に死ぬしかない」といった希死念慮(自殺企図)をほのめかすとき
治療の中心となるのは、精神科や心療内科における薬物療法です。ベースにあるうつ病を治療するため、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSAといった抗うつ薬の投与が行われます。
さらに、妄想の強度が高く焦燥感が著しい場合には、少量の非定型抗精神病薬を併用することで、脳内の過剰な神経興奮を鎮静化させ、妄想の確信度を急速に和らげる処置が取られます。食事摂取が困難な極度の衰弱状態や緊急性を要する重症例では、入院環境下での急速な治療や、修正型電気けいれん療法(mECT)が高い治療効果を発揮することも知られています。
適切な薬物療法が奏功すれば、うつ状態の改善に伴って「なぜあんな極端なことを思い込んでいたのだろう」と妄想が霧散していくケースが大半です。決して「治らない病」と悲観せず、速やかに専門医の診察を受けることが回復への最短距離となります。