全国有数の製造業集積地として知られる大阪府八尾市。その一角に佇む藤田金属は、かつて大手メーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)や日用品のアルミ鍋を主力とする典型的な下請け町工場でした。しかし、価格競争の激化や海外製品の台頭により、下請けに依存するビジネスモデルは限界を迎えつつありました。
転機となったのは、4代目代表取締役社長の藤田盛介氏ら兄弟が下した「自社オリジナルブランドへの挑戦」という決断です。東京のデザインユニット「TENT(テント)」のクリエイターたちとタッグを組み、町工場が誇る金型プレス加工と絞り加工の極限技術を投入。そうして2019年に誕生したのが、ハンドルを取り外してお皿としてそのまま食卓に出せる鉄フライパン「ジュウ(JIU)」でした。
国内外の権威あるデザイン賞(「レッド・ドット・デザイン賞 ベスト・オブ・ザ・ベスト」や「グッドデザイン賞」など)を次々と獲得したこの製品は、大阪・八尾のものづくり企業としての藤田金属の認知度を一気に全国区へと押し上げました。単なる機能美にとどまらず、調理してそのままテーブルに並べるという「体験の再定義」を行ったことが、感度の高い生活者の心を掴んだ決定的な要因となっています。