足の裏にできた硬いしこりを魚の目だと思い込み、市販のやすりやカッターで削った結果、1箇所だったしこりが数カ月で5箇所、10箇所へと爆発的に増殖して皮膚科に駆け込むケースがあります。これは魚の目ではなく、尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)と呼ばれるウイルス性のイボです。
イボと魚の目の違いを見極める決定的な視覚的特徴は、病変部を拡大鏡で観察した際に現れる「黒い点々(点状出血)」です。イボはウイルスが皮膚細胞に感染し、自らの増殖のために毛細血管を引き込んで栄養を吸収します。そのため、表面の角質を少し削ると、毛細血管の断端が黒い胡麻粒のような微小な点として確認されます。また、魚の目は皮膚の溝(皮丘・皮溝)が病変部を避けるように途切れますが、イボは皮膚紋理そのものを破壊して盛り上がります。
さらに、痛みの出方にも明瞭な差異が存在します。魚の目は上から垂直に圧迫した際に激痛が走るのに対し、イボは「患部を左右から指でつまむように圧迫したとき」に強い痛みを訴える傾向があります。
イボに対して魚の目用の削りケアを行うと、ウイルスを含んだ削り粉が足裏の微小な傷口に付着し、自家接種によって病変が急激に拡大します。イボの根本治療には、マイナス196度の超低温を利用した液体窒素治療(冷凍凝固術)や局所免疫療法が必要となり、タコや魚の目の物理的切削とは根本的に治療方針が異なります。