乙宮神社の本質が最も色濃く現れるのが、秋季に執り行われる例大祭です。この日ばかりは静寂に包まれていた境内が一変し、地域住民の手によって設営された提灯に明かりが灯り、威勢の良い掛け声とともに神輿渡御(みこしとぎょ)が行われます。
奉納行事として演じられる地域固有の神楽や太鼓の響きは、単なる観光イベントではなく、何百年もの間、海難事故を防ぎ豊作・大漁を祈願してきた人々の「生きた祈り」そのものです。2026年現在、少子高齢化の荒波を受けながらも、地元有志や地域おこし協力隊の尽力によって伝統継承の仕組みが再編され、外来の参拝者も温かく迎え入れる体制が整えられつつあります。
参拝の見どころは、夕刻から執り行われる宵宮の神事です。木立の合間から差し込む夕日と、境内に立ち込めるお香と潮風の香りが重なり合う情景は、日本の原風景とも呼ぶべき神秘的な美しさを湛えています。