家族が最も混乱しやすいポイントの一つが、「植物状態」と「脳死」の混同です。この2つは医学的に全く異なる状態を指します。
植物状態(医学用語では遷延性意識障害)は、大脳の機能が広範囲に損傷しているものの、生命維持を司る「脳幹」の機能が保たれている状態を指します。そのため、人工呼吸器を使わずに自発呼吸を行い、心臓も自律的に拍動します。睡眠と覚醒のリズムが存在し、目が開くこともあれば、時に涙を流したりあくびをしたりする反射運動も見られます。一方の「脳死」は、脳幹を含む脳全体の機能が完全に失われ、回復の可能性が医学的にゼロとなった状態です。
では、植物状態の患者に「意識」はあるのでしょうか。近年の機能的MRI(fMRI)や高精度脳波測定を用いた研究では、外的反応を示さない患者の約15〜20%に「潜在的な意識(認知運動乖離)」が存在することが判明しています。「テニスをしている姿を想像してください」と呼びかけると、健康な人と同様に脳の運動野が活性化するケースが確認されており、周囲の声や音を感じ取っている可能性が科学的に証明されつつあります。