大相撲の世界で締められる化粧廻しの相場は、一般的なもので1本あたり200万円から500万円前後がひとつの基準となる。しかし、これはあくまで標準的な図案と手刺繍を用いた場合の話に過ぎない。
意匠が複雑を極め、純金糸やプラチナ糸、天然真珠などをふんだんに散りばめた特注品になれば、価格は1,000万円から3,000万円超へと跳ね上がる。過去にはダイヤモンドなどの宝石を数百粒単位で縫い込み、1億円を優に超える価格で話題をさらった超ド級の逸品も存在した。
費用の大半を占めるのは、素材費以上に職人たちの気の遠くなるような手作業への対価だ。土台となる極厚の正絹生地代に加え、図案の型起こし、金銀糸の撚り合わせ、そして熟練の職人が数か月間つきっきりで針を進める「相良刺繍(さがらししゅう)」や「駒繍(こまぬい)」の工賃が積み重なる。1ミリの狂いも許されない手仕事の集積が、この破格のプライスタグを生み出している。