勇次郎の誕生エピソードにおいて、助産師への脅迫と並んで読者に強烈なインパクトを残したのが「世界規模の軍事バランスの激変」です。
原作の解説によると、1950年代後半に勇次郎が産声を上げたまさにその瞬間、遠く離れたアメリカ合衆国や旧ソビエト連邦といった世界主要国の指導者たちが、説明のつかない本能的な恐怖と悪寒に襲われました。地球上に「自国の軍事力を一瞬で無力化しかねない絶対的な一個の生命体」が誕生したことを、各国の首脳が無意識下で察知したのです。
その結果、当時の大統領や書記長たちは防衛本能に駆られ、競うように核兵器の保有および開発を推進することになりました。「勇次郎が生まれたからこそ、世界は核武装を急いだ」という板垣恵介節全開の大胆なロジックは、勇次郎という存在のスケール感を決定づける屈指の名設定となっています。