日本国内で最も身近なセミたちを観察してみると、目の色や配置のバランスには種特有の明らかな個性が存在します。
市街地の公園などで最もよく見かけるアブラゼミの複眼は、全身のマットな茶褐色と調和するような深い暗褐色や黒褐色をしています。保護色としての機能を持ち、木の幹に溶け込むステルス性に寄与しています。この沈んだトーンの複眼を持つからこそ、額の中央にある3つの単眼が放つルビーのような深紅の輝きが一層際立って見えます。
一方、緑豊かな樹木を好むミンミンゼミの目は息をのむほど鮮やかです。生きている個体を観察すると、複眼は半透明感のある美しいエメラルドグリーンやターコイズブルーに輝いています。死後に乾燥すると色素が変色して黒ずんでしまいますが、生体のミンミンゼミが木の幹で見せるグリーンの複眼と赤く煌めく単眼のコントラストは、昆虫愛好家の間でも「夏の宝石」と称されるほどの美しさを誇ります。
また、ヒグラシの複眼はやや青みがかった黒色、ツクツクボウシはオリーブがかった緑褐色など、生息する樹皮の色調や活動する時間帯(夕暮れ時や日中など)の光環境に適応した色彩変異が見られます。いずれの種もセミの目の位置は頭部の最も外側へと張り出しており、樹木にしがみついた状態のまま、首を回すことなく背後や真上まで見渡せる圧倒的な視野角を確保しています。