インターネット上の言説では、「鎌田敏夫=テレビのトレンディドラマや恋愛物の専門家」と短絡的に捉えられることが少なくありません。しかし、これは彼のキャリアの半分しか捉えていない重大な誤解です。
実際、鎌田敏夫は1970年代後半から1980年代の角川映画全盛期において、中核を担ったアクション・サスペンス・伝奇小説の書き手でもありました。自ら執筆した長編小説『戦国自衛隊』や『新・里見八犬伝』はベストセラーを記録し、当時の角川春樹事務所が推進した「メディアミックス戦略」の牽引役として映画化・書籍化の両面で莫大な経済効果をもたらしました。
角川映画における鎌田脚本は、スピード感あふれる場面転換と、死線を彷徨う集団の中での個人の実存を描く骨太なハードボイルド性が際立っています。恋愛ドラマで見せた繊細な会話劇と、伝奇アクションで見せたダイナミックなスケール感という二面性こそが、鎌田敏夫という作家の底知れない怪物性を証明しています。