スタジオジブリがそれまでに築き上げてきた温かみのある作風を一変させたのが、冒頭のタタリ神襲来シーンである。エミシの村を突如襲う蛇状の触手に覆われた巨大な猪神。その圧倒的なスピード感と絶望感は、観客の心に深い傷痕を残す。
村を守るために弓を引くアシタカだが、その矢は神を殺し、自らの腕に死の呪いを受ける結果となる。勧善懲悪のヒーロー像を拒絶し、「生」の過酷さと理不尽さを真っ正面から描いたこの開幕は、まさにスタジオジブリが提示した新たな挑戦状であった。傷を負いながらも前を向くアシタカの姿勢に、作品の核である「生きろ」の思想が強烈に刻み込まれている。