鼻が巨大に腫れ上がり、人々から忌み嫌われて育った男、我王。生きるために奪い、殺し、世界を呪い続けた彼が出会ったのは、天才彫刻家・茜丸と、名僧・良弁上人だった。皮肉にも自分を嵌めた茜丸の腕を切り落とし、流浪の果てに自らの醜悪な手で仏像を彫り始める過程は、読む者の魂を狂おしく揺さぶる。
手塚治虫が紡いだ物語の中で、我王ほど泥臭く、そして神聖な変化を遂げたキャラクターは他に存在しない。彼の生き様は、善悪の単純な二元論をあっさりと粉砕する。怒りと憎悪のエネルギーが、命を削るような彫刻作品へと昇華される瞬間、読者は恐怖を超えた圧倒的な美に直面するのだ。