柏餅が端午の節句に欠かせない縁起物となった背景には、カシワという樹木の生態的特徴が深く関わっています。
カシワの木は、秋に葉が枯れても冬の間は木から落ちず、春になって次の新芽が芽吹くまで古い葉が枝に留まり続けます。この「新芽が出るまで古い葉が落ちない」という特徴を、武家社会の人々は「家督が途絶えない」「子孫繁栄が続く」という吉兆になぞらえました。これが、男の子の健やかな成長と家の存続を願う端午の節句の供物として柏餅が定着した最大の由来です。
興味深いことに、日本全国を見渡すと「柏餅に使われる葉」には明確な地域差が存在します。
植物としてのカシワは冷涼な気候を好むため、東日本や山間部に多く自生しています。そのため、カシワが自生しにくい西日本(近畿以西や四国、九州)では、古くから「サルトリイバラ(地域名:サンキライ、がめの葉など)」の葉で餅を包む文化が育まれました。
サルトリイバラの葉は丸くツヤがあり、カシワの葉とは見た目も香りも異なります。西日本の一部の地域や家庭の伝統によっては、この柔らかい新芽のサルトリイバラの葉を一緒に食べる習慣が残っているケースもありますが、一般的な流通品においては、やはりサルトリイバラであっても剥がして食べるのが通例です。