1995年に石川県で生まれた椎名もた(本名・溝口遼)は、幼少期からエレクトーンやドラムに親しみ、わずか14歳であった2008年末から「ぽわぽわP」の名義でニコニコ動画へボーカロイド楽曲の投稿を開始しました。中学生とは思えない卓越した音響センスと、思春期特有の淡い感傷を掬い取ったサウンドは瞬く間に耳の早いリスナーの心を捉えます。
2012年、17歳の若さでアルバム『夢のまにまに』にてメジャーデビュー。その後、2013年に『コギトエルゴスム』、2015年3月には生前最後のフルアルバムとなった『生きる』をリリースしました。この『生きる』というアルバムタイトルが示す通り、彼は自らの内面に巣食う鬱屈や社会との不和、生きることへの渇望と恐怖を、偽りのない音と言葉に変換して作品化し続けていました。
公の場で語られたインタビューや自身のブログ・SNSにおいて、彼は時に自虐を交えながらも、クリエイターとしての純粋すぎる衝動と創作の苦しみを赤裸々に綴っていました。「音楽を作ることでしか自分を保てない」というギリギリの精神状態で生み出された楽曲群だからこそ、聴く者の胸を強く揺さぶるのです。
逝去当日に投稿された「赤ペンおねがいします」において、初音ミクが歌う「赤ペンおねがいします/僕に丸をください」という一節は、社会や大人たちに向けて自らの生を肯定してほしいと願う、あまりにも無防備な心の吐露でした。この曲を最後に彼の歩みは止まりましたが、遺されたマスターピースは今も色褪せることなく脈動しています。