暗黒武術会準決勝で浦飯チームの前に立ちふさがった「裏御伽チーム」。その黒幕としてチームを統率していたのが、不気味な般若面と老人の姿をまとった「怨爺」でした。怨爺は幻海との対決において、自らの仮面を外し、さらに老いた皮膚の変装を解くことで真の姿を現します。それが白塗りピエロのメイクを施した自称「美しい魔闘家鈴木」でした。
鈴木が老人に身をやつしていた最大の理由は、対戦相手への油断を誘う戦術的欺瞞にありました。しかし、彼の行動原理を深く観察すると、単なる実利にとどまらない強烈な自己顕示欲が浮き彫りになります。老醜という対極の姿から一転して「自らが信じる究極の美」を開帳することで、観衆と対戦相手に最大の心理的衝撃を与えようと画策していたのです。変装という手段そのものが、彼の歪んだ美学と演出欲求を満たすための劇場装置として機能していました。
テレビアニメ版において、この強烈なキャラクターに魂を吹き込んだ声優が曽我部和恭氏です。怨爺状態での低く威厳ある老人声から、正体を現した瞬間の甲高く気取った美青年ボイスへの急激なシフトは、視聴者に凄まじい混沌と笑撃を与えました。後年のゲーム作品等では鈴木勝美氏や羽多野渉氏が役を引き継いでいますが、曽我部氏が作り上げた「ナルシシズムと小物感、そしてどこか憎めない愛嬌」の絶妙なバランスは、今なおファンから至高の演技として絶賛されています。