物語の掉尾を飾るラストシーンは、読者の胸に重苦しくも忘れがたい爪痕を残します。血みどろのゲームが終わり、真鍋香菜は日常の風景へと戻っていきます。街は何事もなかったかのように平穏を取り戻し、学校では他愛のない会話が交わされている。しかし、香菜の心には、父を切り捨て、血縁の崩壊を見届けた冷徹な事実が深く刻み込まれていました。
ここで見事に回収されたのが、第1巻の冒頭から緻密に張り巡らされていた「大輔の過剰なまでの家族アピール」という伏線です。大輔は常に「うちは理想の家族だ」「お前たちのために頑張っている」と口にしていましたが、作中の些細な仕草――娘のプライベートへの無自覚な侵害、妻の意見を軽視する態度、外面の良さと家庭内での尊大な振る舞い――が、すべて「家族を利用して自己肯定感を満たす毒親」の予兆として配置されていました。
くずしろ氏は、百合作品や日常系コミックで培った卓越した心理描写を、本作では「人間の悪意とエゴの解剖」へと完全に反転させました。ラストシーンで見せた香菜の横顔は、理不尽なゲームに勝利したヒロインの表情ではなく、自らの手で「家族という幻想」を解体せざるを得なかった人間の、決定的な孤独を象徴しています。