型枠工事における最大のリスクは、打設途中で型枠がはらみ出して崩壊する「パンク事故」です。この悲劇を完全に防ぐためには、経験や勘に頼る施工を排し、力学に基づいた型枠側圧計算 許容引張力の照査と綿密な型枠セパピッチ計算が欠かせません。
コンクリート打設時に型枠にかかる側圧 $P$($\mathrm{kN/m^2}$)は、コンクリートの調合、打設速度(m/h)、コンクリート温度、スランプ、打ち込み高さによって激しく変動します。JASS 5の算定式に示されるように、打設速度が速く、気温が低く凝結が遅れる冬場ほど側圧は跳ね上がり、打設下部では最大で静水圧(コンクリート比重約$2.3 \sim 2.4 \times 9.8 \times H$)に近い負荷が型枠を直撃します。
セパレーター1本が負担できる許容引張力の標準値は以下の通りです。
- W5/16(2分5厘):約 14.7 kN(1,500 kgf)
- W3/8(3分):約 21.6 kN(2,200 kgf)
- W1/2(4分):約 38.2 kN(3,900 kgf)
ピッチ計算の基本ルールは、「セパレーター1本当たりの負担面積 $A$(縦ピッチ $\times$ 横ピッチ) $\times$ その深度における設計側圧 $P$」が、セパレーターの許容引張力 $T_a$ を下回ること($P \times A \leqq T_a$)です。
熟練の型枠大工 セパ割り付け手順においては、壁の上部から下部まで一律のピッチで配置することは絶対にありません。側圧が最も高まる型枠最下段から高さ1.5m前後のゾーンにかけては、縦ピッチ・横ピッチを300mm〜400mm程度まで緻密に詰め、上部に向かうにつれて450mm、600mmへと広げていく変則配置が鉄則です。合板パネルの継ぎ目(目地)に荷重が集中しないよう、パネルの割り付け図とセパレーターの穴開け位置を完全に同期させる墨出し作業が施工精度の根幹を担っています。