実際に現地へ足を運ぶと、メディアが煽る「抗争の街」というイメージと現実の風景とのギャップに驚かされます。名古屋弘道会事務所場所として知られる名古屋市中村区弘道会本部周辺は、名古屋駅から徒歩圏内の下町風情が残る住宅・商業混在エリアです。
かつて重厚な鉄扉と防弾ガラスに囲まれ、屈強な見張り番が立ち並んでいた本部の前には現在、愛知県警の機動隊車両や警戒ポリスボックスが睨みを効かせています。特定抗争指定暴力団の標章が掲示され、立ち入りそのものが厳しく規制されているため、人影は途絶え、異様なほどの静寂が支配しています。近隣の商店主は声を潜めてこう明かします。
「以前は組の行事があるたびに黒塗りの高級車が列をなし、近所もピリピリしていましたが、今はパトカーの巡回以外で組員の姿を見ることは皆無です。物理的な怖さは消えましたが、厳重なバリケードが日常の風景になっていること自体が、かつての本部の重圧を物語っています」
一方、中部地方最大の繁華街である中区・錦三丁目(通称「錦三」)や女子大小路周辺では、名古屋治安ヤクザ影響の現れ方が大きく変容しています。暴排条例の徹底により、表立って「代紋」をチラつかせて用心棒代を要求する暴力団員は姿を消しました。その代わりに現場で見られるのは、スカウトグループ、半グレ、無国籍の客引きといった「名札を持たない不良グループ」の暗躍です。伝統的ヤクザの統制が弱まったことで、かえって繁華街の秩序維持が不透明化するという皮肉な現実が浮かび上がっています。