予定日を過ぎても、あるいは陣痛が始まって丸一日経過しても子宮口が開かない状況は、妊婦を著しい焦燥感に追い込みます。ネット上では「体質だから」「歩き方が足りないから」といった無責任な言説が散見されますが、医学的に見た子宮口が開かない原因および子宮口全開が進まない理由は、極めて明確な身体的因子に起因します。
第一に「陣痛微弱」です。子宮の収縮力が弱ければ頸管を押し広げる圧力が不足します。第二に「軟産道強靭」と呼ばれる状態であり、頸管部が硬く柔軟性に欠けるケースです。高齢初産などで組織の弾力性が低下している場合にも見られます。さらに見逃せないのが「児頭骨盤不均衡(CPD)」や「胎児の回旋異常」です。赤ちゃんの頭の向きが骨盤の形状と噛み合わず、引っかかって降りてこられない場合、子宮口は8cmや9cm付近でピタリと停止してしまいます。
陣痛促進や熟化を促すために行われるのが、俗に「助産師の内診グリグリ」と呼ばれる卵膜剥離(内診刺激)です。指先で子宮頸管の内口付近にある卵膜を子宮壁からわずかに剥がす医療処置であり、激痛を伴うため妊婦の間で恐れられています。しかし、この物理刺激によってプロスタグランジンという子宮収縮ホルモンが局所で分泌され、停滞していた子宮口の開大が一気に加速することが医学的に実証されています。恐怖を感じる処置ですが、分娩停止や帝王切開を回避するための有効なアプローチの一つなのです。
また、このプロセスの中で発生する破水の兆候と対処も極めて重要です。子宮口全開付近で起きる「完全破水」は分娩を加速させますが、子宮口が開ききる前に高位破水(高い位置で膜が破れ羊水が少量ずつ漏れ出る現象)が起きた場合、外部からの細菌感染リスクが跳ね上がります。破水を感じた場合は、入浴を避け、清潔なナプキンを当てて即座に産院の指示を仰ぐことが絶対の鉄則です。