アパレルが「サンローラン」へと舵を切った一方で、百貨店の1階を彩るリップやクッションファンデーションには、いまも堂々と「Yves Saint Laurent」のフルネームと「YSL」のエンブレムが刻まれています。この乖離に首を傾げる消費者は少なくありません。
この違いを生み出している最大の要因は、企業の資本関係とライセンス構造にあります。
服飾、レザーグッズ、シューズなどを手がけるファッションハウスとしての「サンローラン」は、グッチやバレンシアガを擁するフランスの巨大コングロマリット「ケリング(Kering)」の傘下にあります。一方、香水やメイクアップ、スキンケアを展開する「イヴ・サンローラン・ボーテ」は、2008年に世界最大の化粧品メーカーである「ロレアル(L'Oréal)」グループに買収され、同社がライセンスを保有して独立した商品開発を行っています。
エディ・スリマンによる2012年のブランド名変更は、ケリング傘下のアパレルおよびレザーコレクションを対象としたものでした。ロレアルが展開するコスメティック事業は、すでに世界中で圧倒的な認知度と信頼を誇っていた「イヴ・サンローラン」のラグジュアリーなブランドイメージを維持する方針を選択。その結果、ファッションは「SAINT LAURENT」、ビューティーは「Yves Saint Laurent(イヴ・サンローラン・ボーテ)」という、名称の棲み分けが定着することになりました。