70年代フォークソングの名曲として誰もが知る『なごり雪』は、最初からシングルとして企画された楽曲ではありませんでした。発売日は1974年3月5日、かぐや姫の4枚目のオリジナルアルバム『三階建の詩』のLP盤B面2曲目にひっそりと収録されたのが原点です。
当時のかぐや姫は、南こうせつ、伊勢正三、山田パンダの3人による絶頂期を迎えていました。前年に『神田川』が空前のメガヒットを記録し、社会現象を巻き起こす中で制作された『三階建の詩』において、伊勢正三が自ら作詞作曲・リードボーカルを務めた楽曲が『なごり雪』でした。
関係者の回想録や当時のインタビューによると、伊勢正三は多忙を極めるスケジュールの中、深夜の静寂の中でアコースティックギターを爪弾きながらこのメロディと詞を紡ぎ出したと語られています。「汽車を待つ君の横で」という印象的なフレーズは、彼自身が少年時代から青年期にかけて経験した別れの心象風景と、急速に移り変わる季節への焦燥感が重なり合って生まれたリアルな感情の結晶でした。