展示中止の過程とその後において、政治と芸術の関係をめぐる激しい対立が表面化しました。口火を切ったのは、実行委員会会長代行であった河村たかし 名古屋市長です。河村市長は8月2日に会場を視察し、「日本国民の心を踏みにじる行為であり、名古屋市民の税金が使われるべきではない」と主張。大村知事宛てに展示の即時中止を求める抗議文を提出しました。
これに対し、大村知事は会見で猛反発。「公権力を行使する首長が表現内容を理由に展示をやめさせようとするのは、憲法第21条(表現の自由・検閲の禁止)に違反する疑いがある」と指摘し、公金支出事業であっても行政の恣意的な検閲は許されないとの立場を鮮明にしました。
また、企画を担った不自由展実行委員会と芸術監督・津田大介氏の間でも、展示方法やリスク想定をめぐり認識の齟齬が存在したことが、のちの検証委員会による「表現の不自由展・その後」に関する調査報告書で明らかになっています。展示物の解説キャプションの不足や、予見された批判に対する事前対策の甘さが指摘される一方、芸術祭におけるキュレーションの自律性をどこまで守るべきかという議論が交わされました。
その後、中間報告の提言と安全対策の見直しを経て、会期末の10月8日から14日までの7日間にわたり、抽選制・手荷物検査・金属探知機導入という厳戒態勢のもとで展示再開が果たされることとなりました。