なぜ愛され悪役に?トイストーリー3ロッツォの悲しき過去とその後

なぜ愛され悪役に?トイストーリー3ロッツォの悲しき過去とその後

なぜ愛され悪役に?トイストーリー3ロッツォの悲しき過去とその後の背景について、専門知識を基に徹底解説します。

『トイ・ストーリー3』のクライマックス、ゴミ焼却炉でのスペクタクルは映画史に残る緊張感を生み出しました。炎のベルトコンベアの上で、鉄骨に挟まれ身動きが取れなくなったロッツォを、ウッディとバズは自らの命を危険に晒してまで救出します。誰もが「これでロッツォも改心するのではないか」と期待したまさにその瞬間、彼は非常停止ボタンの前まで到達しながら、ウッディたちを冷たく見下ろし、スイッチを押すことなく一人で逃亡したのです。

恩を仇で返し、仲間を見殺しにしようとしたロッツォの行為は、ピクサー映画史上でも類を見ない完全なる邪悪の決断でした。しかし、因果応報の結末はすぐに訪れます。

施設を脱出したロッツォを拾い上げたのは、サニーサイド保育園のエリアを担当するゴミ収集車の清掃作業員でした。作業員は「子どもの頃、こいつを持っていたんだ!」と懐かしみ、ロッツォの背中のホコリを叩くと、トラックの前方――泥と虫の死骸が飛び交うフロントグリルの中央に、他の捨てられた薄汚れたぬいぐるみたちと共に針金でガチガチに括り付けてしまいます。

かつてデイジーの温かいベッドで愛されていたいちごの香りのベアは、悪臭と排気ガスが立ち込めるゴミ収集車の先端で、雨風に晒され続けるオブジェとして余生を送ることになりました。スタッフロールでも、彼は仲間のぬいぐるみから「喋ると口に虫が入るぞ」と忠告され、悔しそうに口をつぐむ哀れな姿が描かれています。

公開後、監督のリー・アンクリッチをはじめとする制作陣のインタビューでも、「ロッツォがあの後改心して救われたという裏設定は存在しない」という見解が一貫して示されています。自ら他者の愛を拒絶し続けた者には、二度と誰かの特別なおもちゃに戻る道は残されていないという、ピクサーらしい極めてシビアで現実的な幕引きでした。

前田 葵
著者

前田 葵

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。