寺島しのぶの実家である「音羽屋」は、江戸歌舞伎の黎明期から続く屈指の名門門閥です。父である七代目尾上菊五郎は、立役(男役)として重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、文化勲章も受章した名優。母は映画『緋牡丹博徒』シリーズなどで昭和の映画界を席巻した大スター・富司純子(旧芸名:藤純子)です。この両親の長女として生を受けた寺島しのぶの存在は、誕生の瞬間から芸能界全体の注目の的でした。
弟の八代目尾上菊之助は、端正な容姿と確かな技量で古典歌舞伎を支えつつ、新作歌舞伎の開拓にも意欲を燃やす当代随一の花形役者。さらに菊之助の長男である従兄弟の尾上丑之助は、母方の祖父に二代目中村吉右衛門(播磨屋)を持つという、歌舞伎界の東西の頂点が融合したサラブレッドです。寺島しのぶを取り巻く親族関係は、まさに近代日本の伝統芸能史そのものといっても過言ではありません。
一族の広がりを俯瞰すると、寺島しのぶの存在は単に「歌舞伎役者の娘」にとどまらず、古典と現代劇、日本と海外、伝統の掟と革新の精神を結ぶ中心軸として機能していることが分かります。