猫は弱みを見せない生き物です。しかし、日常のわずかな行動変化の中に猫の夏バテサインが色濃く現れます。初期の違和感を見逃すと、数時間で多臓器不全を招く危険な熱中症へと移行します。
臨床データが示す初期の警戒シグナルとして、まず挙げられるのが「食欲の緩やかな減退」と「接触面積の異常な拡大」です。普段は丸くなって眠る猫が、フローリングや玄関のたたきに体をべったりと伸ばし、呼んでも反応が鈍い場合は要注意です。また、毛づくろいが極端に減る、あるいは逆に身体を冷やそうと過剰に舐め続ける行動もストレスと体温上昇の証左です。
これが重篤な猫の熱中症の症状になると、明確な身体反応となって現れます。口を半開きにして「ハッハッ」と激しく息をする開口呼吸(パンティング)は、猫にとって極限状態のサインです。犬と違い、猫のパンティングは緊急事態を意味します。さらに大量のよだれ、足元のふらつき、歯茎や舌が暗赤色〜紫色に変色するチアノーゼが見られた場合、一刻の猶予も許されません。
異変を発見した際の初期対応における鉄則は、「急激に冷やしすぎないこと」です。慌てて氷水をかけたり保冷剤を直接押し当てたりすると、末梢血管が急激に収縮して体内に熱がこもり、かえって深部体温が上昇するショック状態を引き起こします。
正しい応急処置は、水で濡らして固く絞ったタオルを首の後ろ、脇の下、内股などの太い血管が通る部位に優しく当て、うちわやドライヤーの冷風をそっとあてて気化熱で熱を逃がすことです。同時に飲める状態であれば常温の水分を少しずつ与え、処置を行いながら即座にかかりつけの動物病院へ電話を入れ、搬送の指示を仰いでください。