歌舞伎界屈指の名門である成駒屋の歴史を読み解く上で欠かせないのが、複雑かつ強固に結ばれた家系図と後継者の存在です。六代目歌右衛門には実子がいなかったため、芸の継承は養子縁組と一門の結束に委ねられることになりました。
六代目が自らの後継として深い慈愛をもって育て上げたのが、養子となった長男の四代目中村梅玉と、次男の二代目中村魁春です。血統主義が根強く残る歌舞伎界において、六代目は二人に成駒屋伝統の品格と徹底的な基礎教育を叩き込みました。その薫陶を受けた梅玉は、清澄で端正な立ち役として高い評価を獲得し、2013年には養父と同じく人間国宝に認定されています。また、魁春も品格あふれる名女形として重責を果たし続けています。
さらに、六代目の実兄である六代目中村福助の血脈からは、甥にあたる七代目中村芝翫が育ち、その息子である八代目中村芝翫(前名・橋之助)や中村福助、中村扇雀といった実力派たちが現代の劇界を支えています。成駒屋は直系の血筋のみに固執せず、類まれなる芸の精神を共有する養子と一門の強い結束によって、今日までその権威を脈々と受け継いできたのです。