数字や法規定以上に両者を隔てているのが、車内における「空気感」とドライバーの立ち振る舞いです。接客マナー比較を行うと、教育体制の根本的な違いが浮かび上がります。
業界最大手の一角である日本交通ハイヤーの事例を取材すると、配属されるドライバーはタクシー乗務で数年間にわたり無事故・無違反かつ極めて高い顧客評価を維持し続けた精鋭の中から選抜されています。さらに選抜後も、VIPに対するドアサービスの角度、エレベーターや建物エントランスへのスマートな先導方法、要人の会話を一切口外しない厳格な守秘義務教育(コンプライアンス研修)を数百時間にわたり叩き込まれます。
SNSやビジネスパーソンのコミュニティに寄せられる実際の利用者の証言を検証しても、その評価軸は明確です。
「海外本社の役員が来日した際、配車アプリで呼んだタクシーでは車内の芳香剤の匂いや急ブレーキ、英語対応の不可で冷や汗をかいた。翌年から大手ハイヤーに切り替えたところ、フライト状況の事前確認から名刺の受け渡し、静寂なドライビングまで完璧で、役員からも『東京での移動が最も快適だった』と絶賛された」(大手外資系金融・秘書室担当者の声)
一方で、知恵袋やネット掲示板では「急いでいるときに道路沿いに停まっていたハイヤーの窓を叩いたが、ドアを開けてもらえず冷たく断られた」といった投稿が散見されます。これはドライバーの愛想が悪いのではなく、前述の通りハイヤーが道路上で乗客を乗せる行為そのものが道路運送法違反(無許可の流し営業)に問われるためです。乗務員は法律と契約を厳守しているに過ぎません。
ハイヤーの乗務員は、運転中において「後部座席のバックミラーを決して直視しない」という暗黙の作法を徹底しています。同乗者同士の密談や機密情報のやり取りを邪魔せず、気配を消して空間そのものと同化する姿勢こそが、上質なホスピタリティの証とされているのです。