絶頂期にあって、なぜ二人は同時に去ることを選んだのか。1985年、大地真央の退団決定とともに、黒木瞳もまた劇団を去る決断を下した。トップ就任からわずか3年余り。まさにこれからという時期での電撃退団は、ファンのみならず演劇界全体に大きな衝撃を与えた。
その真相の根底にあったのは、「大地真央と共にあるトップ娘役」としての純粋な矜持だった。大地が去る舞台に残る道を選ぶのではなく、運命共同体として最高の瞬間に幕を下ろす。後年のインタビューでも黒木が明かしているように、そこには早すぎる出世によって背負った過酷な孤立と、大地への絶大なる忠誠心と信頼があった。スポットライトの影に隠された壮絶な日々と、自らの美学を貫き通した潔さこそが、彼女の退団劇を伝説へと昇華させた理由である。