小学校の最終学年を迎えた冬、図工室の空気は心地よい緊張感に包まれる。作業台に並ぶのは、天然木の板材と使い慣れた道具たち。木工芸の魅力は、削り方ひとつで素材がまったく異なる表情を見せる点にある。平坦な板に陰影が宿り、手作業ならではの温かみが宿る瞬間、教室には静かな没頭が広がる。
卒業制作として取り組むオルゴール作りは、自己表現の集大成だ。修学旅行の情景、部活動で流した汗、友人と過ごした何気ない日常の断片。これらを1枚の天板に凝縮する作業は、過去を振り返り未来へ思いを馳せるかけがえのない内省のプロセスでもある。