長年親しまれたスタジアムを取り壊し、巨額の投資を行ってまで建て替えに踏み切った背景には、単なる老朽化にとどまらない構造的課題がありました。1941年の開設以来、改修を重ねてきた旧施設は、Jリーグのスタジアム基準や国際陸上競技連盟(現ワールドアスレティックス)の定めるクラス1基準を満たすことが困難になっていたためです。
特に課題となっていたのが「屋根のカバー率」と「ホスピタリティ施設・バリアフリー対応の不足」でした。旧スタジアムはメインスタンドの一部にしか屋根がなく、雨天時の観戦環境において観客から改善を求める声が根強くありました。また、大型映像装置の旧式化、車椅子席の動線制限、選手・メディア用の諸室不足など、国際メガイベントを開催するには抜本的なスクラップ・アンド・ビルドが不可欠だったのです。
新スタジアムは、観客席の傾斜角度や座席の配置が見直され、陸上競技場特有の「ピッチとの距離感」を極力感じさせない工夫が随所に凝らされています。大屋根が音響を反射させる構造となっており、歓声がスタジアム全体に反響する臨場感あふれる劇場型空間へと進化を遂げます。