ハンドスプリング(Handspring)は、助走から前方に踏み切って両手を床につき、体を弓なりに反らせながら一気に回転して足で立ち上がる前方倒立回転跳びのことです。体操競技の跳馬やゆか運動だけでなく、チアリーディング、ストリートダンス、アクション演技など幅広い分野で多用される花形スキルの一つとして定着しています。
アクロバット初心者の多くが疑問に抱くのが、「バク転(後方倒立回転跳び)」や「ロンダート(側方倒立回転体軸1/4ひねり後方下り)」との違いです。これらは運動の進行方向や床反力の利用方法が根本から異なります。
バク転は後方へ跳躍するため、跳ぶ瞬間に進行方向が視界から消える心理的恐怖が最大の関門です。しかし、運動力学的には「背中側に反る動作」が人間の骨格構造に沿っており、手をついた後は比較的着地地点を目視しやすいため、恐怖心さえ乗り越えれば回転力を維持しやすい特徴があります。
対照的にハンドスプリングは、前方に走って踏み切るため初動の怖さはバク転ほどありません。しかし、手をついた直後の回転局面において顔が天井を向き、着地直前まで床が見えないブラインド状態が発生します。この一瞬の視界喪失に耐え、背中を反らせた状態から一気に体を起こす柔軟性と連動性が求められるため、実は「バク転よりもハンドスプリングの方が綺麗に立って着地するのが難しい」と語る体操指導者は少なくありません。
一方のロンダートは、側転の動きから空中で体を半ひねりさせて後方を向いて着地する技であり、主にバク転や後方宙返りへ繋げるための「助走エネルギー変換技」として機能します。ハンドスプリングが単体で完結する前方アクロバットであるのに対し、ロンダートは後方大技への発射台という明確な役割の違いが存在します。