ダイヤが崩壊したカオスな状況下で、次々と電車をさばいていく裏には、京急の運転指令所が誇る神業のようなオペレーション技術があります。
大手私鉄やJRの多くは、コンピューターによる自動進路制御装置(PTC/PRC)を中心とした運行管理を行っています。しかし京急では、自社開発の運行管理システムを導入しつつも、異常時には指令員の職人技と手動介入を最大限に発揮する仕組みを維持してきました。
指令員は刻一刻と変化する全線の列車位置、乗務員の勤務時間、車両の所属基地、駅のホームの空き状況を頭に入れ、瞬時にパズルを解くように運行パターンを組み替えます。駅の信号扱い所や現場の駅員、運転士もその意図を阿吽の呼吸で汲み取り、わずか数十秒の停車時間で折り返し作業や待避を完了させます。この組織全体に染み付いた「現場力」こそが、驚異的なスピードで運転再開と遅延回復を成し遂げるコアエンジンなのです。