桜井和寿というソングライターの特異性は、自身の人生における生々しい過失や倫理的葛藤を、そのまま作品へと昇華させた点にあります。1990年代後半にリリースされた楽曲の歌詞には、当時の不倫劇や背徳感を克明に反映したフレーズが数多く散りばめられています。
活動休止直前に発表されたアルバム『BOLERO』に収録された「ALIVE」や、復帰後のアルバム『DISCOVERY』に収められた「Prism」などの楽曲では、自己嫌悪、罪悪感、偽善への苛立ちが剥き出しの言葉で綴られています。さらに、2002年のアルバム『IT'S A WONDERFUL WORLD』に収録された名曲「渇いたkiss」に見られるような、去りゆく恋人と新たな感情の狭間で揺れるリアルな心理描写は、ファンや音楽評論家の間で「赤裸々すぎる不倫ソング」として語り継がれています。
この一連の騒動に対する世間の受け止め方について、SNSや掲示板(知恵袋・5ちゃんねる等)の声を検証すると、令和の現代とは明確な温度差が見て取れます。
ネット上の反応を分類すると、以下のような二極化が起きています。
- 倫理的批判層:「下積み時代を支えた奥さんを捨ててアイドルと再婚した事実は許されない」「どれだけ良い曲を歌っても略奪婚の過去は消えない」という厳しい意見。
- 音楽的受容層:「清廉潔白な聖人君子ではないからこそ、人間の弱さを描いた深みのある名曲が生まれた」「過ちを隠さず作品で痛切に表現している」という共感的な見解。
2020年代以降のコンプライアンス社会であれば、一発でメディア追放となりかねない深刻なスキャンダルでした。しかし当時は、圧倒的な楽曲クオリティと泥臭い人間味の提示によって、結果として多くのリスナーを納得させてしまった特異な事例といえます。